Vol.3(第3話):空のなおちゃん
ペットやプランツを日々の生活にプラスして生まれる「ゆたかなくらし」。そんなすてきなライフスタイルを実践する人やお店を追った連載フォトローグ、〈YUTAKA+〉(ゆたかプラス)。
連載3回目は、福岡市中央区平尾にある珈琲ふらを訪れ、店主の平野さんに看板猫のなおちゃんのお話を聞いてきました。
なおちゃんの日々は自由気まま。朝ごはんを食べ終わると、ふらりと外に出かけます。ふらはお店が集まった長屋のような場所にあるのですが、なおちゃんはそのお店のあいだや軒先をすいすい歩き回ります。
もうずっと、ここがなおちゃんの勝手知ったる我が家の庭なのです。
そんななおちゃんの訃報を聞いたのは、ふらを訪ねてからそれほど日にちが経っていない、ある週末のこと。
お店の外で自動車の事故に遭ったのです、と平野さんの息子さんから聞いたときは、まだ信じられませんでした。
手もとにある取材写真の中のなおちゃんが、生き生きとしていたからかもしれません。
平野さんが淹れたコーヒーの香りと、ふらの白い壁。
そこに自然にとけ込むなおちゃんの茶色と黒の背中。
なおちゃんがいないふらは、なおちゃんがいたときのふらと比べると、寂しいのは間違いありません。
でも、ふらにはなおちゃんの思い出があります。平野さんが話すなおちゃんのエピソードや、平野さんのお孫さんが書いたなおちゃんのおうちの表札。
なおちゃんが見ていた窓辺の景色と、なおちゃんが引っかいた柱。
それは今でも、ふらにあります。
ふらのキッチンで、糸島にいる次女さんが焙煎したコーヒーを淹れる平野さんや、その2階で雑貨店の準備を始める長女さん。
周りにはお孫さんもいるかもしれません。姿は見えなくても、そんな家族の営みのなかに、同じく家族であるなおちゃんの思い出が今も息づいているのです。
空に行ってしまったなおちゃん、寂しくなりましたが、ゆたかな時間をありがとう。わたしたちと同じように、あなたに会えたことで心が満たされたお客さんがたくさんいたことでしょう。
そしてあなたの思い出が、これからもふらをすてきなカフェにしてくれるはずです。
SHOP INFO.
ふら
福岡市中央区平尾2-17-21
TEL 非公開
OPENING HOURS 11:00AM – 5:00PM
水曜・木曜定休
Photography: Koji Maeda
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